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理系の留学は、研究目的だけじゃない

自分を見つめ直し、自己成長につなげた留学経験

理系の留学は、研究目的だけじゃない

自分を見つめ直し、
自己成長につなげた留学経験

M.Y.さん

自動車メーカー・技術職
日本在住 M.Y.さん

工学部出身で「流体工学」を専門的に研究。大学3年次にアメリカへ9か月間の留学を経験。現在は自動車メーカーで技術職として活躍中。現場と設計部門の橋渡し役を担う。プライベートでは、夫婦で互いのキャリア形成を支え合いながら、オフも充実させている。

研究室では得られなかった、“自分を知る”ための留学経験

大学では工学部に在籍し、水や空気の流れを解析する「流体工学」を研究していました。効率的な気流を実現するため、流れを見える化し、整流の仕組みを追究する――そんな研究へ取り組んでいた中、私は留学をしました。実は私は幼い頃からパイロットに憧れていました。しかしその夢を諦めることになってしまい、将来の方向性を見失いかけていました。そこで「一度、日本を離れて、自分を見つめ直したい」と思い、大学3年次に9か月間の留学を決行しました。

向かったのはアメリカ・ニューヨーク州の地方都市。あえてアジア系住人が少ない環境を選び、学校でもなるべく日本人同士で固まることを避けました。当時は英語への苦手意識があり、まずはその苦手意識を克服しようと努力しました。学校には南米やヨーロッパ諸国からの留学生が多く、多様なバックグラウンドを持つ人々との対話を通じて、自分の価値観が揺さぶられる体験もありました。地元のアイスホッケーチームにも参加し、体当たりで現地の生活に飛び込みました。氷上では、ぶつかった衝撃で「大怪我をする」と焦ったことも。異なる文化の中で仲間と汗を流す経験は、言葉以上のリアルなつながりを教えてくれた気がしています。

ホームステイ先のホストマザーの生き方も、私に影響を与えました。アメリカ人で、シングルマザーとして息子を育てながら、多様な背景を持つ学生たちを積極的に受け入れている人でした。遊ぶときはしっかり遊び、働くときは真剣に働く――オンとオフをきっちり切り替える彼女の姿勢が、今の私の仕事観にもつながっています。

帰国後、英語に対する苦手意識が明らかに変わりました。TOEICスコアは760点に上昇。スコア以上に大きかったのは、「話せなくても臆せず話してみる」というマインドの変化だったと思います。さらに「人と関わることが好き」という自分の本質も知ることができました。それは、現在、技術職というキャリアを選び、現場の人たちと一緒にモノづくりを進める仕事にも、活きていると感じています。

就活のスタートが遅くても、自分なりの軸・考えがあれば問題ない

帰国したのは、大学3年次の後期。一般的な就活スケジュールでは、インターンシップのピークも過ぎ、周囲の友人たちはすでに選考段階に入っていました。しかし私の場合、焦りはありませんでした。理系のため「うまくいかなければ大学院に進学する」という選択肢があったからです。実際にインターンシップには参加しておらず、面接練習のような対策もほとんどしませんでした。

とはいえ、何も考えずに取り組んだわけではありません。就職活動の情報は、研究室の先輩やアイスホッケー部の先輩から直接聞き収集しました。企業選びで重視したのは、「この会社で自分は成長できそうかどうか」という点です。理系であれば業界や職種がある程度決まってくるという考えもありますが、私は業界を絞らず、大企業を中心に幅広く見ていました。最初は「理系だから自動車か重工系だろう」と思い込んでいましたが、先輩の話を聞く中で「理系だからこそ選択肢が広がる」とも実感しました。

最終的に進んだのは、自動車メーカーの技術職です。今の会社に決めた一番の理由は、社員の方々が「仕事を楽しんでいる」と感じたことでした。仕事の厳しさや責任を引き受けながらも、成長している実感を持っている――そんな印象を受けました。

就職活動では、留学経験を全面に押し出したわけではありません。自己PRや学生時代に力を入れたことについて、アイスホッケーの経験とあわせて触れる程度でした。

たとえ帰国が遅く、就活の王道ルートから外れていても、自分から動けば就職活動はなんとかなります。留学中に「わからないことは、自分から聞いて動かないと何も始まらない」ということを学び、就活でもその考え方が自然に活かされました。自分で情報を集め、自分の意思で動けたことが、今の自分の糧になっている気がします。

技術者として、人として。自分らしい働き方を見つけた今

現在は自動車メーカーの技術職として、車の開発における製造性を考慮した設計提案を担当しています。図面通りに部品を組み上げるだけでなく、試作して初めて見える細かな課題や調整点を拾い上げ、設計部門と現場の橋渡しをするのが主な役割です。実際の現場では、限られた時間の中で課題を洗い出し、設計にフィードバックするスピード感も求められます。試作段階での気づきが、完成度を大きく左右します。このようなモノづくりの現場に、技術者としてのやりがいを感じています。

文理問わず社会人として企業で働くからには、「人との連携」が求められます。理論だけでは前に進まない場面も多く、現場のスタッフと丁寧に対話しながら、一緒に最適解を探っていきます。その過程で、設計側と製造側、それぞれの立場の違いや思いを知ることも多いです。「人との連携」という点では、留学中の経験が活きていると感じます。年齢も文化も国籍も異なる人々と関係性を築こうとした経験は、やはり価値があったと思います。

今後は、技術者としての専門性をさらに磨いていくことに加えて、チームをまとめるようなマネジメントの役割にも挑戦したいです。現場と設計の間をつなぐ経験を積んできたからこそ、より広い視野でモノづくりを支える立場にもなっていけたらと感じています。

そして、私にとっての“働き方”は、プライベートとも切り離せないものです。仕事一辺倒になり過ぎずに、意識的にオンとオフを切り替えるようにしています。これも留学中に出会ったホストファミリーの姿が参考になっています。シングルマザーとして子育てをしながら世界中の学生を受け入れていた彼女は、「遊ぶときはしっかり遊び、働くときは真剣に働く」そんなメリハリのある生き方を体現していました。技術者としても、そしてひとりの人間としても、自分らしい働き方や生き方を選び取る力。それは、留学経験が教えてくれたことです。

結婚した現在、妻も仕事を続けており、今後のお互いのキャリア形成を支え合っていけるような働き方をしています。子どもが生まれた時には数か月間育児休暇を取り、現在も子どもの保育園の送り迎えを妻と協力しながら行い、仕事もプライベートも、どちらも充実させています。オンとオフ、仕事も家庭もしっかりと両立し、充実した生活を送れているのは、ホストマザーと一緒に生活をした経験があったからかもしれません。

語学力の向上だけではない、
理系でも留学に行く価値はあった​

理系の留学というと、研究など学術的な目的のイメージがあるかもしれません。しかし私が留学を決めたのは、将来に迷っていた時期に、「自分と向き合う時間」が必要だと思ったからです。語学力を身につけるだけなら、日本でも可能です。しかし現地での生活は、文化も価値観も異なる人たちと向き合う毎日で、自分の考えや姿勢をあらためて問われる場面がたくさんありました。

社会に出た今、仕事ではチーム内での連携や、多様な立場の人々との対話力が必要不可欠だと実感しています。理系の専門性だけではなく、人間性や柔軟さは必須スキルになります。このような人間力を養う意味でも、やはり留学は貴重な経験。研究や語学が目的でなくても、留学で得られるものは本当に大きいと、私は思っています。

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