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[業界研究] 繊維・化学・薬品・化粧品
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概要洋服や自動車内装などに使われる繊維素材を開発し、メーカーにふさわしい素材を提案・販売するのが繊維業界の主な仕事。化学業界は、プラスチック加工や繊維メーカーなど、その素材を必要とするメーカーに、原料である石油化学製品などを届けている。薬品業界は、化学原料または生物から取り出した原料を組み合わせて、薬や化粧品を作っている。 繊維・紙・パルプ業界衣料品メーカーや産業メーカーに素材を提供する繊維といっても、その種類はさまざま。衣料品に使われる糸や綿、人工皮革などの素材を研究開発し、アパレルメーカーに提供するというイメージが一般的だが、化学繊維や天然素材の研究が進み、住宅用の断熱材からスポーツ器具、航空機の内装や自動車のエアバッグにも繊維は使われている。また、紙・パルプ業界は、雑誌や書籍に使われる印刷用の紙から段ボール、トイレットペーパーなどに使われる素材を研究開発し、印刷会社や衛生用品、段ボールメーカーなどに提供している。 2011年における繊維、紙・パルプの動向経済産業省の発表では、2010年の化学繊維生産高は99万8,000トンで、2009年度より市場は拡大。繊維産業の生産は、2008年のリーマン・ショックの際に減少し低迷が続いていたが、2010年後半より、若干上向きの動きとなった。地震の影響に関しては、3月の速報値では、繊維産業は化繊などの大手企業の直接被害は殆ど無かったが、一部の中小のニット、織物、縫製工場等において直接被害があり、発生直後は全国的な自粛ムードも手伝い高額品などの落ち込みが見られた(現在は回復傾向)。 環境に優しい素材開発が進んでいるこれまでは石油を原料とする化学繊維と綿を原料とする天然繊維が組み合わさった衣料品が多く、リサイクルをするにも工程が複雑だった。しかし、最近は植物由来の原料や生分解性プラスチックを使った新素材が登場し、100%土に戻して循環できるほか、石油由来のポリエステルでも廃棄後に地中の微生物が分解できるため産業廃棄物にならない素材も開発された。日本も紙・パルプ製品における古紙リサイクルに力を入れており、古紙回収率・利用率では世界でベスト3に入っている(2010年)。地球環境に優しい素材開発が、今この瞬間も絶え間なく続けられている。 |
業界関連用語
●炭素繊維
優れた強度が世界的にも高く評価され、宇宙機器や航空機などに使われている高機能素材。原料は、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)。
●バイオプラスチック/生分解性プラスチック
生物資源から作られたプラスチック。100%土に返すことができるので、産業廃棄物にならない。
化学・石油業界
化学石油素材をメーカーに届ける
化学石油素材というと難しいが、簡単にいうとプラスチックや合成ゴム、合成繊維などのこと。これらの化学石油素材は、コンピュータなどの液晶フィルムやペットボトル、洗剤、洋服や携帯電話など、生活に密着するあらゆる製品の材料として使われている。そのため、プラスチック加工や繊維メーカーなど、その素材を必要とするメーカーに、素材を届けるのが石油化学会社の仕事だ。ナフサ(ガソリンの1種)や天然ガスなどからプラスチックやゴムなどをつくる「石油化学」と、デジタル関連素材など付加価値の高い化学製品をつくる「機能性化学」に大きく分かれる。海外の大型エチレンプラント稼動で業界再編が加速
石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産量は、中国を中心とするアジア地域の需要拡大が好材料となって2007年に過去最高の774万トンに達した。しかし2008年秋以降、需要が急激に減退し、年間のエチレン生産量は前年比11%減の688万2,400トンにまで減少した(石油化学工業協会調べ)。2009年は691万2,627トンと落ち着き、2010年はアジア向け輸出の拡大、各種需要喚起策による内需回復等から、エチレン年産量は3年ぶりに700万トン台を記録。しかし2011年度の国内生産量は再び前年度比7.5%減の647万5,300トン。東日本大震災で一部のエチレン製造設備が被災し操業を停止したことや、昨秋以降の中国での需要減退が理由と考えられる。また、中国や中東などで相次いでエチレンプラントが稼動しはじめており、価格競争が激化、日本国内のエチレンプラントも業界再編や事業撤退が加速すると見られる。
原料ナフサの価格が大きく影響
日本の石油化学工業は、主な原料としてガソリンの1種である「ナフサ」を使用しており、その約5割をサウジアラビアやUAE、韓国などから輸入している。「ナフサ」の価格は基本的に原油価格と連動しているため、2007年度以降、大幅に価格上昇した。リーマンショック後は一気に下落したものの、世界経済は2009年春から夏にかけて最悪期を脱し、2010年の時点でナフサ価格は上昇した。また、現状では、アジアでの旺盛な需要の盛り上がりに加え、中近東情勢の緊迫により直近では1キロ6万円を大幅に超える推移となり、メーカーの中には製品価格の改定をせざるを得ないところもある。このように原料価格の変動が激しく、各社とも収益の安定を図るためには「ナフサ」以外の原料を使う割合を高めることも必要だと考えており、そのための研究・努力を行っている。
次世代向け素材の開発が注目される
今後、ニーズが高まりそうだと注目されているのは、太陽電池に欠かせないシリコンウエハー素材。電池交換や配電線が必要なく、環境にも優しい太陽電池は、ますます需要が高まりつつあるため、化学石油業界では太陽電池向け素材の開発競争が激しくなっている。また、地球温暖化や人口増加で世界的に水不足になっており、水処理膜を使った水の浄化技術も注目されている。この水処理膜素材向けに、化学石油業界は素材を提供している。
業界関連用語
●ファインケミカル
生産量が少ない希少性と付加価値の高い化学製品全般のこと。医薬品や化粧品、農薬なども含まれる。
●スーパーエンプラ
スーパーエンジニアリングプラスチックの略。エンプラは耐熱性・対磨耗性に優れている高性能プラスチックで、自動車や電子機器の分野で用いられているが、それをはるかに上回る性能を持つのがスーパーエンプラ。150℃以上の高熱に耐え、中には270℃まで耐え得ることができる物もある。超高弾性や高強度特性を持つため、宇宙・航空用に使われている。
薬品・化粧品業界
化学原料・生物原料から薬品や化粧品を生み出す
医薬品メーカーは、化学原料または生物から取り出した原料を組み合わせて薬品を作り、医療品卸業者を通して病院や薬局に販売。2009年6月1日から薬事法改正により、風邪薬やビタミン剤などの大衆薬はコンビニエンスストアでも売ることが可能になった。化粧品メーカーは、化学原料または生物から取り出した原料を組み合わせて化粧品をつくり、百貨店やドラッグストアなどに販売している。国内だけではなく、商社などを通じて、海外への輸出も盛んだ。身体に優しい新薬研究が進む薬品業界
薬品業界で生き残るためには、莫大な新薬開発費が必要といわれている。その開発費を生み出すために、合併をしたり、国内だけではなく、海外への輸出に力を入れる企業も多い。また、最近注目されているのが、副作用が少なく、治療効果が期待できる抗体医薬品(詳細は、業界関連用語参照)や注射薬を貼り薬や塗り薬にして副作用を軽減できる新しい製剤技術。副作用を気にする消費者も増えていることから、身体に優しい薬品の研究が進められている。
一方、国は医療費抑制のため今後、後発薬の普及を促す方針を固めている。これに対応するため、今後、業界再編などの動きが活発化すると見られている。
海外市場への販路拡大がカギ
薬事法改正により、製薬会社やフィルム会社がスキンケアブランドを生み出したり、他業界の企業がナノテクノロジー技術を応用した美容液を発売したりと、いろいろな業界からライバルが現れている。
また、景気の影響から高級化粧品から中・低価格帯化粧品へ需要がシフトしており、国内市場は停滞しているが、男性用化粧品市場は確実な成長を見せており、中国市場への参入も起こっている。販路拡大のためにアジアや中東など海外での売り上げアップに力を入れる化粧品メーカーも多い。
業界関連用語
●抗体医薬
身体に備わった免疫力を生かすため、副作用が少ない薬品のこと。ガンやリウマチなどへの有効医薬として注目されている。
●ゲノム創薬
遺伝子の塩基配列情報を利用することによって、新しい薬やより効果が高く副作用の少ない薬を開発する手法。この手法を取り入れることで医薬品開発の期間短縮が可能になると考えられている。
●登録販売者制度
薬事法の一部改正により2009年6月から新たに始まった制度。それまで医薬品の販売が可能なのは薬剤師のみだったが、登録販売者資格を取得すると、ドラッグストアなどで売られている一般用医薬品の第2類(解熱鎮痛薬、主な風邪薬など)と第3類(ビタミンB・C含有保健薬、主な消化薬など)の販売が可能になった。
●ドラッグラグ(drug lag)
新薬を患者の治療に使用できるまでの時間差、または海外の新薬を国内承認できるまでの時間差のことをいう。日本は諸外国より新薬認可が遅く、新薬開発から承認まで平均4年と長いことが指摘されている。しかし、最近では、治験に対する医師の理解が進みつつあることや、治験コーディネーター(CRC)と呼ばれる職種の活躍などにより改善が期待されている。
ゴム・セラミックス・ガラス・セメント業界
自動車やデジタル家電、建築業界を支える素材
自動車や電化製品は、実にさまざまな素材が組み合わされて作られている。ゴムやセラミックスもその素材の一つで、採用される製品向けに素材を提供している。伸び縮みしやすく、強度にも優れているゴムは、自動車を支えるタイヤに欠かせないため、タイヤ業界が主な取引先。また、セラミックスとはガラスやセメントも含む、固体材料を幅広く含んだ総称。ガラスは、最近、液晶テレビ用のガラスパネルとして多く採用されており、セメントは土木・建築用の材料として使われている。回復基調にあるゴム素材と、今後に課題を残すガラス素材業界
航空機や自動車のタイヤ、工業用のゴムホースやゴムベルトに使われるゴム製品は、日本の技術力の高さが世界的に高く評価されてきたこともあって、これまで国内外で安定的に需要が伸びてきた。ところが2008年度以降、主要取引先であるタイヤメーカーが製造数を減らしていることから売り上げは徐々に減少。
2011年のゴム製品生産量は1,436,239トン、出荷金額合計は約2兆2,641億円で、前年と比較して微増。国内消費が落ち込む一方で、中国やインドを含む新興国での需要は増加しており、ゴム製品の輸出に関しては、2011年も、前年比105.0%と増加している(日本ゴム工業会調べ)。
一方、ガラス素材は液晶テレビの人気のおかげで順調に推移していたものの2009年の電気ガラス生産量は前年比83.8%の139,825トン。2010年は前年比132.1%の184,746トンと盛り返すものの、2011年の生産量は地デジ特需が落ち着いたこともあり106,112トンと再び落ち込んだ(電子硝子工業会調べ)。そういった状況を鑑み、日本の硝子メーカーは市場を世界へと移しつつある。現在、各社が注目しているのは太陽光発電用ガラスやエコガラスで、今後の市場拡大に期待が寄せられている。
海外市場の開拓に活路を見出すセメント業界
業界を取り巻く環境は、1996年度に99,267千トンとピークとなった後、毎年減少傾向を辿り、公共工事の削減やマンション着工の減少などによって厳しさを増していて2010年度は56,050千トン、前年比96.0%となった。過去最高の1996年度に比較すると56%程度にまで縮小している(社団法人 セメント協会)。そうした中、各社とも経営の合理化に加えて海外市場の開拓に力を入れ始めている。
業界関連用語
●VOC規制(揮発性有機化合物排出規制)
2004年に改正された大気汚染防止法によって2006年より光化学オキシダントの原因になるとみられる溶剤を使用する工場は、都道府県に届出をしたうえで排出基準を厳密に守ることが義務付けられた。これまでゴム工場やタイヤ工場などでは大量の有機溶剤を使用して大気中に排出してきたが、有機溶剤放出量が規制されたことによって、自主的取り組みで対処していくことが求められるようになった。
●ファインセラミックス
情報産業向けなどに開発された、より精度や性能が優れたセラミックスのこと。通常のセラミックスは、耐熱性、耐食性、電気絶縁性に優れているが、これに加えて機械的、電気的、化学的など、目的に応じた性能が加わったものがファインセラミックスと呼ばれる。
アパレル業界
独自の業態を持つ業界
アパレルメーカーの多くは、衣料品の企画を行い、その企画に従ってテキスタイル会社に生地など発注し、縫製は縫製会社に依頼し、それを買い取って販売する。メーカーとは言っても自社で生産するところは意外に少ない。中には海外有名ブランドとライセンス契約を結び、そのブランドが企画した製品の生産手配を行い、販売するケースもある。メーカーの中には、婦人・紳士・子供服・肌着ナイティなどを総合的に扱う「総合アパレル」、婦人服のみを扱う「婦人アパレル」、紳士服の中でも特にシャツのみを扱う「シャツメーカー」などがある。
中国での製造ライン確保も課題に
アパレル業界は、長期にわたる個人消費の低迷と物流経費の増加などによりかつてない苦境にあり、10年前に比べると市場規模は縮小してきている。中でもこれまで主力市場としてきた百貨店衣料売上高の縮小幅は大きく、長年、百貨店を主な売り場としてきた大手アパレルメーカーに深刻な影響を与えている。
また、最近は安価な海外ブランドの進出や輸入製品の急増、衣料品製造から販売までを一括して行い高品質な製品を安く提供する「ファストファッション」が激しい競争をしている。アパレルメーカーの多くが中国で製造をしているため、工場のライン確保が競争となり、生産に影響が出てくるケースが発生。バングラディシュやベトナムなどへ生産を移管する動きも出ている。
尚、海外の有名ファストファッションブランドが日本へ参入する一方、日本からも海外へ進出する企業も出てきており、ニューヨーク、パリ、ロンドンなど主要都市を中心に展開し、海外店舗数が100を超えるところもある。
中学校でのダンス必修化による衣料品産業への影響
2012年4月より中学校にてダンスが必修化される。それに伴い、衣料品メーカーがダンスウエアの開発・生産に乗り出している。
実際に開発過程で使用してもらい、集まった意見を元に動きやすさ、汗をかいても透けない等の工夫をしているところも。また、シューズメーカーの中にはダンスのスピンやステップがしやすいよう靴底を加工し販売したところ、売上が好調で当初の年間発売目標を2倍以上に修正した。
今後も各社の創意工夫に期待がかかる。
業界関連用語
●プレオーガニックコットン
無農薬栽培を始めて3年未満の綿のこと。有機栽培綿であるオーガニックコットンは、3年以上農薬や化学肥料を使っていない土地での栽培が認証の条件となっており、生産者は生産から認定されるまでの3年間は生産と収入が減るために、その期間に栽培された綿を「プレオーガニックコットン」として販売しようという動き。農薬などの影響は少なく、環境に優しい素材といわれている。
●東京ガールズコレクション
10代後半から20代の女性を対象に、2005年8月から年2回のペースで行われているファッションショー。テーマは「日本のリアル・クローズ(現実性のある服)を世界に」。ファッション性のある普段着をモデルや人気タレントたちに商品を着させてステージを歩かせ、その様子を会場やインターネットなどで配信、希望者はその場で携帯サイトやインターネットサイトを通して、商品を購入することができる。2011年には中国・北京で「東京ガールズコレクションin北京」も開催された。
●RFID
電子タグのこと。ICと小型アンテナが組み込まれたタグやカード状の媒体から、電波を介して情報を読み取る非接触型の自動認識技術で、商品のセキュリティーや生産、在庫、物流管理などに利用できることから経済産業省が推進している。
どんな仕事があるの?
●マーチャンダイザー(MD)
市場動向やシーズンのトレンドをいち早く掴み、「売れる商品」を予測する。そのうえで予算や商品内容の構成、販売方法までを手がけ、ブランドの方向性を決める全体の要となる。
●デザイナー
生地や染色などに関する深い知識、トレンドをつかむマーケティングの才覚、営業やプレスと協力していくためのコミュニケーション能力など、才能やセンス以上のものが要求される。
●パタンナー
デザイナーがイメージした服を実現するため、型紙(パターン)をおこす。
●プレス
アパレルメーカーや繊維会社、あるいは販売店、輸入商社などの広報部門で、自社製品をマスコミや消費者にアピールする。ブランド戦略の中核を担う。
●バイヤー
自社のブランドポリシーやトレンドに合致する商品を見つけだし、買い付けてくる。
●エリアマネージャー
自社のチェーン店舗を複数統括し、担当する地域の特性を理解し、売上を向上させ、利益を上げるための戦略を担う。
●ショップマネージャー
ショップの運営全般にわたる最高責任者。在庫管理、売上管理、スタッフの教育、エリアマネージャーと協力し、販売戦略の策定と実行のほか、自ら接客も行う。
●ファッションアドバイザー
ショップの店頭にて接客を行う販売スタッフ。